COMMENT
酒井善三の作る映画にはワンショット毎にアイデアがある。
そのアイデアに基づき、昨今流行りのナチュラルな演技とも、スタジオシステム全盛期のような作り込んだ演技とも、
才能ある監督が陥りやすい抑制の美学や振り付け演出とも違った形で、俳優の芝居を撮ろうとしている。
その上で、観客の想像力にお任せしますといった思考停止=責任放棄をしない。
スティーブン・キングは、かつてホラー小説やホラー映画において、
読者や観客に「扉の向こう」を想像させることがいかに有効か詳細に説きながら、
自分はその扉を開けてみせると語った。
扉を開けて、その向こうに「いる」ものを見せる、と。
それでも読者や観客の想像力を奪わない、むしろ想像力を刺激するやり方がある。
キングの語るそのイバラの道を、酒井はいそいそと楽しそうに往く。
現実と妄想が交じり合い、即物的な禍々しさが浮上する感触は、『反撥』から『テナント』にいたる、ある時期のポランスキーの映画や70年代のシャブロルやフライシャーの『絞殺魔』を思わせる。
面白いです。
映画好きはもとより、恒川光太郎や京極夏彦の小説、妖怪好きの人にもおすすめします。
篠崎誠(映画監督)
素晴らしく面白い、以外の言葉が出てこなくて困るのだけれど、
それに気づいたのは二度目にモニターで観た時でした。
なぜ試写室のスクリーンで観た時には「立派だ」としか思わなかったのだろう。
舞台が狭い空間なため顔の大きな人ばかりを見つめていたせいなのか、話の展開に惹き込まれて物語を楽しんでしまったせいなのか……いや、多分、シナリオがジャンルの定型をどう裏切るかの予測を外しまくって観ていたせいだと思う。これほど重層的な仕掛けでありながら局面が早いテンポで切り替わる展開について行けてなかった、ということだよな。
だから、
この映画『カウンセラー』は二度観ることをお勧めします。
一度目はサスペンスとエロを愉しむため、
二度目は話を知った上で二人の女優の演技合戦と演出を味わうために。
『おもちゃを解放する』も面白かったけれど、酒井君は本当に腕の確かな脚本家であり演出家なのだなあと改めて思いました。
そして、なんといっても
西山真来さんの凄さ!鈴木睦海さんの魅力!
大工原正樹(映画監督)
※随時更新
冒頭2分半、その日最後の患者の診察を終えたカウンセラーが洗面所で手を洗っていると、
その背後にとつぜん「やっぱり、予約とかないとだめですよね」と声がする。
びっくりして顔を上げると、鏡には怯えた様子の女性が写っている。
ここから、一気に映画に引き込まれる。
たった40数分の尺にもかかわらず、物語は二転三転四転し、
虚と実が交錯した果てに、ついに長いベロを出した妖怪が登場する!
ホラーでもスプラッターでもない、正々堂々のスリラー映画だ。
万田邦敏(映画監督)
酒井善三監督の新作映画『カウンセラー』見してもらった。
単純で的確だからこそ強力な映画の力だけで自我の崩壊が描写されてて、
それがめちゃ怖い。
ぜーんぜん誤魔化しが無くて潔い怖さ。
カットが変われば世界も変わっちゃう。
主演のお二人、鈴木睦海さん西山真来さんがまたサイコー。
大畑創(映画監督)
江戸川乱歩、夢野久作を彷彿とさせる現実と幻影、その境界線の曖昧な「真実」を描いた現代の怪奇映画。 音の使い方が秀逸で、全編に漂う静かな狂気を見事に構築。
このイヤーな感じ、好きです!
佐々木誠
(映画監督/映像ディレクター)
すさまじい緊張感と不気味さ!
画面から目が一瞬も離せなかった。
現実と幻想の境目が曖昧になり、自分が何者かもわからなくなっていく
感覚が恐ろしい。カットが切り替わる瞬間、鳥肌が立つような衝撃がある。
怪談話でもあり、ミステリでもあり、純文学でもあり、
あらゆるジャンルを超越した
映画体験としか形容できない42分間だった
乙一(小説家)
ナニコレ!?どのカットも恐いんだけど!!
そこに音響効果も相まって何回もビクンってなった!!
アウトレイジが全員悪人なら、カウンセラーは「登場人物全員恐い。!!!
俳優 佐藤貴史
(サボさん)
惜しむらくは映画が40分で終わってしまう事。
あそこから後40分間、同じクオリティで話が続いていたら、
歴史的な大傑作になったのではと思っています。
保坂大輔(脚本家)
西山真来の表情に目を奪われた。
カットが切り替わったら、どんな顔をしているのか…
恐怖と期待を抱えて観た
内藤瑛亮(映画監督)
最後、思わぬ方向に舵を切ったのでゾッとしました。
女優さんの怪奇な演技がとても素晴らしかったです。
セカイ監督
(Youtuber/映像クリエイター)
あー面白かった。
終始漂う不気味な緊張感。
この映画に映る顔や体、声には異常な説得力がある。
42分という尺の中で、自己と他者、生と死をも混沌とさせる
最高に不愉快なエンタメ!!
(超褒め言葉です!笑)
上村 奈帆
(映画監督/脚本家)
次のカットが予測できない。
あたりまえのようにカットバックしたかと思うと、とてつもないカットが不意打ちしてきたりする。
それが、こんなに映画を面白くするなんて。
最高にスリリングで驚嘆しました。
入江 悠(映画監督)
根底にずっと独特な空気が流れていて、
最後までその空気に絡めとられていた。
見ている側が作品を掴めそうで掴めない、一種の癖になるスパイスのような
ジワジワと身体に浸透してくるような作品。
俳優 皆川暢二
まだまだこんな映画のつくりかたが出来るんだと心静かに快く、強く圧倒された
狭く閉じた空間に、なぜこれほど豊穣に、官能的に、呪わしく光景が出現するのか。そしてこの光景は、いつからどこから私たちのもとにやってきたのか…。
各ショットに細かくみなぎる明暗・角度・音・表情の力と、それらの大胆予測不可でかつ(物語自体は恐ろしく非人間的かもしれないが)非情な世界に倫理的…とでも形容したらいいのか、あとから思い返せば頷くしかないショットの接続。その未知の堆積に、想いもしない遥かな場所からなにかをもって来られているのだと思います。
多様に広がるいまの映画にあって、心から畏敬に値する映画のありかたと思いました。
木村文洋(映画監督)
かなり久々に“ヤバいもの”を観てしまった……
脚本、構成、場所、キャスト、間合い、画、音響、全てに不安が張り詰め、
薄気味悪い空気が満ち満ちてくる――
かなり久々に“ヤバいもの”を観てしまっ…あれ?
……気がしただけ?……マズい、憑り込まれる。
酒井善三監督、、、、凄い才能だ!ぎっちり憑り組まれた長編が観たい。
清水崇(映画監督)
『カウンセラー』凄い映画また観てしまった。
まだまだ映画ができることは無限にあると感じさせてくれるし、映画に安易に手を出すことを躊躇わせる。
怖い映画。
古澤 健(映画監督)
これほど面白怖い映画見たことがない。
こちらの創作意欲まで大いに刺激された。
続編作ってぜひシリーズ化して欲しい。
佐藤佐吉
(映画監督・脚本家・俳優)
次に何が飛び出して来るか分からない、画面に映った役者さん達の佇まいが全員不穏な良質のホラー映画。
これを1日8時間撮影×4日間で撮影したという事実にインスパイアされる映画人はかなり多いハズ!
松崎悠希(俳優)
自分の好きなジャンルの映画でもあり、
とても楽しく拝見しました。
低予算ながら、映画において何が効果的であるかをとてもよく考えて作られており、
面白かったです。
自分にはこういう脚本は書けないなと
うらやましく感じました。
中西健二(映画監督)
40分ちょっとの中編だが、
これは凄い!近年最も不気味な映画
と言っていいだろう。
全ての画面に恐怖と錯乱が張り付き、
見ているこっちまで気が変になりそうだ
黒沢 清(映画監督)
初期クロネンバーグを思い出させるような傑作でした。
カメラが撮るものと演出が的確にマッチしている
と思いました。
清水崇さんが出てきた時のような新しいタイプの映画の誕生を感じました。
しかし何より西山真来さんが怖かったです(笑)。
瀬々敬久(映画監督)
わずか42分の間に
二転三転どころか七転も八転もして
きっとこうなるだろうという予測は
全く別の角度から裏切ってきて
私はいったい
どこに連れて行かれるのだろう、、、
という興奮にも似た恐怖を感じた。
小沢まゆ(俳優)
他者の語る記憶を想像するとき
それは本当にその人の記憶なのだろうか。
あるいは、彼女自身の…?
正常が揺らぎ、私を見失う。
映画が終わって私を取り戻したとき
深く息を吐いた。
渡邊雛子(俳優)
抜群。
現実の中にカメラをどう置くのか。
それをどう繋ぐのか。
映画の基盤を成す組み立てをより精密に選び取ることで拓ける地平があるという実践。
そしてスクリーン自体が鏡となり
鑑賞者の中に個人的出来事を引き起こしていく。
少なくとも僕はそんな体験をした。
小原治(ポレポレ東中野スタッフ)
映画館の闇の中で
先の見えない恐怖が襲う
音も、場面も、女優の芝居も
何もかもが怖くて
心をこれでもかってくらいにかき乱されて
胸がゾワゾワしっぱなしだった
40分の映画でよかったって心から思いました笑。
森田真帆
(映画ライター/別府ブルーバード劇場館主補佐)